ボンヤリーヌの映画茶話

ボン子が新旧の映画の感想を綴るブログです。

プロフェッショナル 仕事の流儀 ジブリと宮﨑駿の2399日

映画を見た感想ではなくテレビ番組の話で恐縮ですが、見た映画に関するドキュメンタリーなので。

 

2023年12月16日(土)7:30〜にNHK総合で放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀 」の「ジブリと宮﨑駿の2399日」の回。
事前の予告はほぼなく、前日に急遽発表されたプログラムです。

そのせいか見逃した人も結構いたようです。ただNHKプラスで配信もあるので、見逃した人はNHKプラスへGO!(ただし一週間限定)

私のぼんやりとした記憶では、過去にも「プロフェッショナル 仕事の流儀」やNスペ等で宮﨑駿さんを追いかけたドキュメンタリーはあったはず。その全部を見たわけではないけど3、4回は見てるはず多分。大体はジブリの新作映画の公開に合わせて放送されています。

今までのNHKドキュメンタリーでは宮﨑監督の新作に対する思いをなんとか言葉として引き出そうとするものの、当人はのらりくらりかわしてなかなかがっつりとは語らない。
結局、長時間撮影した映像の中から、ヒントになりそうなわずかな言葉を引き出すのがやっとという感じでした。

ところは今回のドキュメンタリーはちょっと違う。それは冒頭からすぐにわかりました。

監督の仕事場での様子の映像と共に過去のジブリ作品の短いカットが何度も入る。
監督の言葉にジブリ作品の中の同じセリフを被せたりと、やたら演出が凝っている。

多分今までのドキュメンタリーと同じように長時間密着してて撮影方法は今までとそんなに変わらないと思うけど、ドキュメンタリーとしての見せ方がぜんぜん違う。

こういう過剰気味の演出のドキュメンタリーが苦手な人もいるだろうけど、私は「面白そう」と興味を持ち見始めました。


宮﨑監督にとって高畑勲という人は特別だというのはなんとなくは知っていたものの、ぼんやりとライバルのような存在だと思ってました。

ところが今回の放送を見てビックリ!ライバルという一言で表せるような生やさしいものではないことを思い知らされました。
Xの実況でも「BL」だとか「ブロマンス」だとかいう言葉が何度も流れてきました。
もちろん2人はそういう関係ではないのですが、そう言いたくなるのもわかるくらい宮﨑監督の高畑監督への執着が強く、複雑な感情が絡まった愛憎が漏れ出ているドキュメンタリーでした。

宮﨑監督の口から何度「パクさん(高畑勲監督のこと)」という言葉が出たことでしょう!

高畑監督への悪態をつきつつ、隣に座る高畑監督から「次回作を期待してる」と言われれば今まで見たこともないようなデレデレの笑顔を見せる。
高畑監督の葬儀で弔辞を読む際に涙で声を詰まらせ、葬儀後も何も変わらないと言いながら何ヶ月も仕事がまったく手につかなくなってしまう宮﨑監督。

いろんな人との別れを経験してきたはずの宮﨑監督をして、これだけ混乱させてしまう高畑監督という人の大きさを改めて知る思いでした。


この番組を見ようと思ったきっかけの一つは、映画「君たちはどう生きるか」を理解するヒントがないかなということ。
情報前も公開後も宮﨑監督をはじめ制作側から公式なテキストはほとんど発表されず、なかなか映画の理解ができてませんでした。でもこの番組の中でいくつかのことがわかりました。作中のキャラのモデルとされる人です。

サギ男=鈴木敏夫P
大叔父=高畑勲監督
キリコ=保田道世さん(ジブリ色彩設計者)

サギ男  大叔父  キリコ

サギ男 大叔父 キリコ

公開当初からサギ男のモデルは鈴木Pだろうと噂されてしましたが、大叔父のモデルに関しては宮﨑監督自身だという声と、高畑監督だろうと声と両方ありました。
大叔父=宮﨑監督とすると、この映画自体が宮﨑監督からの遺言のような様相を帯びてきます。

私は高畑監督をモデルとするほうがしっくりくるような気がしていました。
大叔父=高畑監督との訣別を描いた(というより訣別するために描いた)のがあのシーンだったんじゃないかな。

ただ、この映画全部がそのために作られたわけではなく、宮﨑監督が描きたかったものは他にもたくさんあるはず。それが何なのか、今の時点では多分半分もわかってないと思います。

眞人

でも、今回のドキュメンタリーでわかったことがあったように、これからも何かの機会に少しずつわかればいいかな。それはジブリの作品かもしれないし、それに関するインタビューや書籍かもしれない。もしくはジブリとはまったく別の作品かもしれない。

映画「君たちはどう生きるか」はそんなふうに少しずつ理解していければ面白い作品と思います。

 

追記:映画の感想も書きました。

bonyarine.hateblo.jp