ボンヤリーヌの映画茶話

ボン子が新旧の映画の感想を綴るブログです。

PERFECT DAYS

公開初日に観てきました。

好きな映画。

とにかく役所広司さんの表情が素晴らしい。なんて満足気に微笑むんだろう。
上を見上げては微笑む。誰かに見せるための表情ではなく、自分が感じたままの笑顔。


監督はヴィム・ヴェンダース
ドイツ人監督が撮った映画なのに、途中からそういうことを忘れるぐらい日本を描いてる映画だった。

例えば柄本時生くん扮するタカシは、いつも感情や状況を10段階で表現する。
「10の内、9ぐらい好き」とか「10の10ぐらいスゴイ」という感じで。
これって日本の若者の語彙力の低さを表してるなと思ったけど、こういうのは外国でもあるんだろうか?それともたまたま偶然?

後、明るいうちから入る銭湯の気持ち良さ。
銭湯が珍しい外国人監督なら客がたくさんいる時間帯に撮ったんだじゃないかな?
平山は開店直後の空いている銭湯へ行って明るいうちに身体をさっぱりさせる。
あの気持ちよさは日本人にはよくわかる。

平山が通う食堂も路面店じゃなくて地下鉄の駅に通じる地下街にある。わざわざそういう立地の店を選ぶのもめずらしい。これは一周回って外国人監督らしいと言えば言えなくもない。


映画情報を見てみると脚本はヴェンダース監督だけでなく日本人の高崎卓馬さんも参加してる。それなら日本の事情に明るくなるわけだ。

 

この映画が外国人監督の手によると私が感じたのは2カ所。
エンドロールの後のクレジット。あれは日本人監督ならわざわざ入れないだろう。
外国人監督が日本人以外の人へ送る文だ。
でも日本人が読んでも胸に沁みる。エンドロールが始まってもくれぐれも席を立たないように。


もうひとつは平山がニコと分かれる時。
可愛がってる姪とはいえハグしたのはちょっと驚いた。日本人は家族でも異性にハグする人はそんなに多くない。平山が姪にハグするタイプとは思えなかったから。

そして自分の妹にもハグしたのはもっと驚いた。
そういうところは外国人監督だからかな?と、観ている時には思った。
ただ、ネット情報によるとあれは台本になかったハグだとか。
むむむ。

驚きはしたけど、あのハグは平山のやさしさがよくわかるシーンなので嫌いではないです。


この映画はヴィム・ヴェンダース監督によって神格化された日本人を描いていて美化されすぎ、監督の理想にすぎない、という感想を見かけました。

確かに平山は美化されすぎかもしれない。理想的人物で現実味がないかもしれない。

それでもいいんじゃない?と思います、個人的には。
だってポスターにも書いてますからね。
「こんなふうに生きていけたなら」って。
監督の理想を描いて何が悪い。

 

PERFECTDAYS

 


この映画を観てしばらくして思ったのは、荻上直子監督の映画「かもめ食堂」にちょっと似てるということ。映画の内容じゃなくて現実味の無さが。
かもめ食堂」だけじゃなくて、松本佳奈監督・小林聡美主演のドラマ「パンとスープとネコ日和」「ペンションメッツァ」とかもそう。

主人公は淡々とストイックに生活していて、私たちは「いいなぁこんな生活」と憧れる感じ。

でも憧れると同時に、実際にはあんなふうに生きるなんてきっとできないなと思ってしまう。

「PERFECT DAYS」の平山にも近いものを感じました。
憧れるけど自分にはできない生活を眺める。そして少しでもいいからそこに近づければいいなと願う。そんな映画です。